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化学業界でも実感…AIで“調査が遅くなる”現象の正体とは

「AIで仕事が速くなる」は本当か?

「AIを使えば、生産性が爆発的に上がる」。そんな希望を持って導入されたAI支援ツールですが、2025年に発表されたある研究結果は、その前提を覆すものでした。

GPT-4のようなAIツールを使用した場合、上級開発者の作業時間が平均で19%も遅くなったのです。

研究で明らかになった「逆効果」の実態

スタンフォード大学などの研究チーム(論文名:The Impact of AI on Developer Productivity: Evidence from GitHub Copilot)は、16名の熟練オープンソース開発者を対象に、「AIなし」と「AIあり(GPT-4)」の両条件で同じタスクを実行させる実験を行いました。

     
  • AIなし:平均164分で完了
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  • AIあり:平均195分(=19%遅延)

さらに、AIが提示したコードのうち、62%は破棄されており、その確認・修正に多くの時間がかかっていたことも判明しました。

予測とのギャップに研究者も驚き

この結果は、事前予測とも大きく乖離していました。開発者たちは「AIを使えば24%は速くなる」と見込み、AI研究者はさらに「30%以上速くなる」と予測していたにもかかわらず、実際は逆の結果に。

その理由は、「AIの提案が文脈に合わず破棄される」「かえって迷走する」など、精査や軌道修正にかかる“後始末コスト”が想定以上だったことにあります。

🧭 筆者の体験から見えた「AIが遅く感じる理由」

筆者自身もAIツールを日常的に活用していますが、今回の研究結果を見て思わず「やっぱりな」と感じました。

というのも、AIは文章生成や情報検索を補助する面では非常に便利ですが、実際の仕事で劇的に時間短縮ができたかというと、そうでもない場面も多いのです。

特に、ある程度精密な調査や資料作成の場面では、次のような目に見えにくいコストが発生します:

     
  • AIが提示した情報の取捨選択にかかる時間
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  • 引用元の信頼性を検証する手間
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  • AIが出典元を誤って提示し、辿り着けないことで生じる“無駄足”

ちなみに筆者は化学業界で、原料の選定や文献調査などにもAIを使う機会があります。

しかし実際には、AIが出した候補を自分でひとつずつ確認したり、データベースで裏取りする必要があり、かえって調査時間が長くなるケースが多々ありました。

特に、化学分野では物性や組成、相溶性などの微細な条件が判断材料となるため、AIが出力した情報をそのまま採用できないことが多く、最終的に人の目と知識で検証する工程は不可欠です。

だからといってAIに価値がないとは思いません。むしろ、最初の一歩を切り開く道具としてのAIは、思考のきっかけやキーワード発見に役立つ存在だと感じています。

結局、AIは「適材適所」。どこで使うか、どこで切り替えるか。 それを判断できることが、これからの私たちに必要なスキルなのだと思います。

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